スクール6 〜妄想×料理対決!?×忍び寄る影〜


「ああ〜、何か暇だなあ・・・・」
ゴンはわけもなく自分のベッドの上でゴロゴロしていた。
今日は平日だというのに、なぜゴンが家にいるのかというと、
パクノダ先生にズシと一緒に心を読まれたとき、やけ酒をあおっていたのが先生達にばれたからだ。
ペットのキツネグマ、コンもついさっきお腹いっぱいで寝てしまったし、
それに勉強をしようにもあんまり良くわからないのだ。

「ゴン〜、お買い物してくるから、いい子にお留守番頼むわね〜!!」
「は〜い、ミトさん!」
ミトさんが出て行ったのだろう、1階の勝手口の方から靴の音がした。
普通なら、ゴンの親代わりのミトさんは、今回のことできつく叱らなければならないのに、その気配すらない。
それもそのはずで、事件の後、落ち込んでいたゴンに
ついうっかりアルコールを勧めてしまったのは、他でもないミトさんだったのだ。
職業柄ゴンにも普通にお酒を扱わせていたので、感覚が麻痺してしまっていたらしい。

「あ〜あ、みんな今ごろどうしてるかな・・・・・。」
クラスの仲間の顔を一人一人思い浮かべる。
キルアやカルト、クラピカ、レオリオ・・・・・そしてもちろんズシのことも。
「・・・・そうだ、ズシは大丈夫なのかな!?」
ズシはお小遣いのためでなく、生活のためにアルバイトに来ていたのを思い出して、
急に心配になったゴンは電話機の前に立った。

プルルルルル・・・・・・

「もしもし・・・・・」
「あ、ズシ、オレだよ、ゴン。」
「ゴンさん!? どうしたんスか? 学校は・・・・?」
「・・・・オレも自宅謹慎になっちゃった。」
「えっ、ゴンさんがっスか!?」
「うん、ほら、オレあの時お酒飲んでて、それがパクノダ先生にばれちゃって・・・・。」
「そういえば、そうだったっスね・・・。」
「それより、ちゃんとご飯食べれてる?」
「オス! ウイング先生がご飯作って持ってきてくれることになったっスvv」
「そっか、よかったね!」
ゴンはズシの明るい声を聞いて少し安心した。
でも気になることが一つ。
あの自分とズシばかりを指名するウイング先生がご飯を持ってくることだ。
ゴンはなんとなく裏があるような気がした。
「・・・ウイング先生、なんか変なことしなかった・・・・・?」
「? 別に何もないっスけど・・・。 でも、すごく優しくていい人だったっス。」
「そう、それならいいんだけど・・・。」
「・・・・あ、ちょっと待つっス。 誰か来たっス。」

(なんだ、思い過ごしかな・・・・・。)

「あ、ミトさん、いらっしゃい。ちょうど今ゴンさんと電話してたところだったっスよ。」
「あら、ゴンと?」
部屋に通されたミトさんは、電話代の上に置いてあった受話器を取った。
「ゴン。」
「え、ミ・ミトさん!?」
「何お話してたの? まさか悪巧みじゃないわよね?」
「え、ち・違うよ。 ズシが心配だったから・・・・。」
「それなら大丈夫よ! これから私がお弁当作って持っていってあげることにしたのよvv」
「ええっ!? でもそれは・・・・」
「いいのいいのvv」

ガチャ・・・・・・

「・・・何も切ることないのに・・・・・。」
ミトさんに一方的に切られてしまったゴンは、また退屈な時間を過ごすことになった。

ゴンの本当の父親であるジンにやっとあきらめがついて、
29歳になって理想のタイプ(ガテン系?)になりそうな子が見つかったというのに、
ここで引き離されてたまるものかと思ったミトさんは、何かと理由をつけて、自分の方から会いに行くようにした。
ここでズシによい印象を植え付けて、ズシがちょうどいい年頃になったら
上手く騙して、入り婿にしてやれと思っているのだ。
いわゆる逆光源氏というやつである。

「ホ〜ラ、ズシ君、お弁当よvv」
「うわ〜、美味しそうっス!」
思わず口の端からよだれが垂れる。
可愛いお弁当箱に、繊細に彩られた食材がいかにも美味しそうだ。
ズシはフォークをグーで握ってお弁当を頬張り始めた。
「ん〜〜vv んまいっス!」
「そう、良かったv」
美味しそうに目を細めてるズシの顔を見ながら、ミトさんは妄想の世界に足を踏み入れた。

「親方〜、自分、もうメシにするっすよ〜。 腹減ってしごとになんねぇっす!」
ハチマキをして、作業着姿の青年が作業場の鉄筋に腰掛けて、ハンカチに包まれたお弁当の包みを開く。
すると中には弁当箱と紙切れが一枚。

”今日も頑張ってねvv アナタv”

「お、なんだおめえの弁当、愛妻弁当ってやつか?」
隣に座った先輩が覗いてくる。
「へへ・・・あいつには照れちゃうっすね〜〜、 ん、相変わらずうまいっす!」

「アア〜・・・、良いわ〜vv 憧れちゃう・・・・・ハァ・・・・・・・。」
「ミトさん?」
自分の目の前でなぜかうっとりしているミトさんに、どうしていいかわからない。
さらにミトさんの妄想が夜のシーンに移ると、ズシはただただ混乱するだけだった。

しかし、そんな妄想も一瞬にしてかき消されてしまうのだった。

ピンポ〜ン

「あ、・・え・・・・と、また誰か来たっス!」
ズシは胸を撫でおろした。
あんな状態のミトさんと二人きりでいるのは不安でしょうがなかったから。
「ウイング先生!」
「ズシ、お昼ごはんのこと、すっかり忘れてました。 お腹空いて・・・ないみたいですね・・・。」
「・・・・・・助かったっス・・・。 怖かったっス・・・・・・。」
よっぽど怖かったのだろう、ズシは思わずウイング先生の胸に顔を埋めた。
「おやおや(vvvvvvvvvvvvvvvvvvv!!!)、どうしたのですか?
 たしか・・・ミトさん(でしたよね・・・?)がお弁当を持って来てくれているというのに・・・。」
心の中で思わずガッツポーズをしながらも、表面上は冷静。
「あら、ウイング先生、いらしたんですか?」
ミトさんの笑顔は引きつっている。
「ええ、ズシ君の食事を作りに来たのですが・・・・。」
「どうぞ、ご心配なさらずに、ウイング先生。 これからは毎回私が作って持ってきますので。」
「いえいえ、そういうわけには参りません。 ズシ君は私の教え子ですので。
 関係のないあなたの手を煩わせては、失礼というものでしょう?」
ウイングさんの笑顔には青筋がピクピクしている。
「いいえ、ウイング先生、うちのゴンやズシ君を誘惑なさるような人に任せるのは心配ですわ。」
「あなたは仮にも、二人の生徒を停学にする原因を作ってしまったのですよ。 信用できませんね。」
穏やかな言い争いは、少しずつ熱を帯び、大きくなってゆく。
「あなたの噂はゴンから聞いているのよ。
 ゴンとズシ君ばっかり授業で当てて、無理難題を吹っかけて快感を得ているのでしょう?」
「わ・私は別にそんなこと・・・・」
「どうかしら? もしかしなくてもあなた、ホモでマゾでショタコンで、変態の権化のような方なのでしょう。」
「あ・あの・・・・・?」
ズシの口をはさむ余地がなくなっている。
「ゴン君はそんな悪口を言うような子ではありません。
 それに、ズシ君は怖がって私に抱きついてきました。
 これはミトさんが何か変な行動を取ったからです。 そうでしょう?」
先生に話を振られて、ズシは震えなが頷く。
「うっ・・・・・ま・まあ、どちらにしても男性のあなたにお料理は無理よ。 お引取り下さい。」
「・・・話を反らさないで下さいよ。 大体男だからとかそういうことで料理の腕を判断されては困ります。
 独身男をなめると痛い目に遭いますよ!」
「上等じゃないの! ならば勝負よ!!
 これから私とウイング先生がそれぞれ料理を作って、どちらが美味しいか、ズシ君に決めてもらいましょう。」
「受けて立ちましょう。 勝った方がズシ君にお料理を持ってくるのですね?」
「ええ、もちろんよ。 負けた方は、今後一切ズシ君に関わらない、それでいいわね!?」
自信満々に言い切るミトさん。
「えっ!!? それはちょっと・・・・。」
ウイング先生はしり込みした。
料理屋をやっているミトさんとの料理対決では、明らかにウイング先生が不利だから。
「何? もしかして怖気づいたわけ?」
「・・・そ・そんなことありませんよ!! それで行きましょう!!」
「まあ、私なら何回もズシ君にご飯作ってあげてたから、ズシ君の好きなものぐらい知ってるし。
 もちろんあなたの料理もそれ以上よね?」
「あ・当たり前です! で・では、早速材料を買いに参ります。」
ウイングさんとミトさんは、ズシのことなど全く忘れ去って、それぞれ食材選びに出て行ってしまった。

「何だったんだろう・・・・?」
騒ぎが去って少し安心したズシは、ミトさんの持ってきたお弁当を全部食べて、お昼寝し始めた。


それからしばらくして、ゴンの家では・・・・・

窓の外から見るからに変な格好をしたピエロっぽい男が、ゴンの家を覗いていた。
「う〜ん、厄介なミトさんはお出かけ、お婆さんはゲートボール☆
 今がチャンスだね、クックック・・・・・◇ 今行くからね・・・リンゴちゃんvvv」

そう、その男とは、数日前、女装したズシに襲いかかろうとしたヒソカだった。

「ぎゃ〜〜〜〜〜っっっっっっ!!! ヒ・ヒヒ・・・ヒソカ・・・・!!!」

トイレから自分の部屋に戻るや、ゴンは大きな叫び声を上げた。
無理もない、自分のベッドにあのヒソカが座って、ジュルっとよだれをすすっていたのだから。

「ど・どうやって入ってきたんだ!!」
家中の窓やドアのカギは閉めてあるし、ガラスの割れる音もしなかった。
「おやおや、震えちゃって・・・、ホントにカワイイなぁ・・・キミは・・・v」
「こ・答えろ!!」
「ん〜〜? 奇術師に不可能はないの・・・♪
 それより、せっかく二人きりになれたんだから、イイコトして遊ぼうよ・・・☆」
ポンポンと自分の隣を叩くヒソカ。
アヤしい事この上ない。
「・・・・わ〜〜〜っ!! ミトさん助けてぇぇぇ〜〜〜!!!」

ゴンは外出禁止令を破って、ミトさんのいるズシの借家に向かって逃げ出した。




<あとがき>
なんだか大変なことになってきました。
ミトさんVSウイング先生、さらにヒソカの襲来・・・・・。
バイオレンス溢れる壮絶な地獄絵巻が繰り広げられることでしょう。

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